転生アラサー腐女子はモブですから!?
 この男は、奴隷商から買ったグレイスの下僕達とは違い、ランバン子爵家の息子であり、執事とは言え貴族である。黒目黒髪の端麗な容姿が、グレイスの好み、どストライクだったが、貴族であるがために手出しが出来ない。

 自身の痴態と引き換えに、セスを専属執事に欲しいと、変態ドンファン伯爵へ交渉するのが精一杯だった。

(まぁ、セスから私に手を出させればいいだけの事よ。そうなればセスは私のもの……)

「グレイスお嬢さま、お呼びでしょうか?」

 グレイスは下僕の膝の上に跨がり、左右から二人の美丈夫の手によりマッサージという名の愛撫を全身に受けていた。セスが入って来た扉からは、グレイスの秘所が丸見えになっている。

「今夜は王城の夜会で屈辱的な事があって、わたくし、とっても傷ついているのよ。セスに慰めて欲しいのだけどダメかしら?」

 グレイスはセスに見せつける様に、さらに股を広げてみせる。

「その様なご命令はお受け出来ません。グレイスお嬢さまの可愛いペット達なら喜んで慰めてくれると思いますが。そこに居る三人で足りなければ、他の者達も呼び、まぐわればよろしいかと」

 能面の様なセスの顔は、グレイスの痴態を見ても一切変わらず、紡がれる言葉も辛辣だ。

(少しくらい狼狽えてもいいでしょ。あぁ、つまらないわ……)

「冗談よ。ある女の事を調べて欲しいの」

 下僕からバスローブを受け取ると軽く羽織り、セス以外の者達を下がらせる。

「アイシャ・リンベル伯爵令嬢とノア王太子殿下、キース・ナイトレイ侯爵子息、リアム・ウェスト侯爵子息の関係よ。あとは、アイシャとかいう女の情報とリンベル伯爵家の情報を集めて欲しいわ。醜聞や弱味なんかも分かれば上出来ね」

「リンベル伯爵家というと王妃様の妹君が降嫁した家ですね。その関係でか、伯爵家であるにも関わらず、公爵家や侯爵家など高位貴族との繋がりも強いかと思います」

「そう……、他には?」

「アイシャ嬢は、ノア王太子殿下の従兄妹でもありますし、兄君のダニエル様はリアム様と共にノア王太子殿下の側近でもあります。その関係でアイシャ嬢と王太子殿下、リアム様はお知り合いだったのではありませんか。キース様との関係はわかりませんが」

 なんだその華々しい交友関係は!?

 それなのに、記憶の中の乙女ゲームには名前すら出て来ないなんて、意味が分からない。

 ヒロインポジションに突如現れた女。

(気味が悪いわ。私の知らない所で何かが起こり出しているの? 何とかしてあの女を排除する手立てを考えなければならないわね)

「セス、どんな情報でもいいわ。アイシャ・リンベル伯爵令嬢について調べてちょうだい!」

「かしこまりました」

 グレイスはセスが部屋から退出するのを確認すると、呼び鈴を鳴らし、可愛い下僕達とめくるめく官能の世界へ落ちていった。


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