転生アラサー腐女子はモブですから!?
災い転じて福となす?
『――――王都の喧騒を離れ、ナイトレイ侯爵領の自然あふれる地で、一緒に過ごしませんか?』
リンベル伯爵家へと迎えに来たナイトレイ侯爵家の馬車に揺られ、アイシャは先日受け取ったキースからの手紙を読み返していた。
(この手紙、私に拒否権ないじゃない)
『一緒に過ごしませんか?』って言っているくせに、迎えの日にちまで指定してあるのだから、こちらの意見は聞いていないのと同じ。結局のところ強制連行すると言っているようなものだ。
(当日迎えに来た人に『行きません』って言ったら、どうするつもりだったのかしらね? まぁ、侯爵家相手にそんなこと出来ないけど)
迎えの馬車が到着した時、アイシャが逃亡しないように、黒い笑みを浮かべた母が、しっかりと監視していた事を思い出し身震いする。
(あぁぁぁ、私に逃げ道はないのね。なら、楽しまなきゃ損よ! ナイトレイ侯爵領ってどんな所かしら~♪)
根が楽観的なアイシャは、久々のバカンスに思いを馳せる。
車窓を流れる景色は、街を抜け、田園風景を抜け、いつしか鬱蒼と茂る森の中を進む。王都から数時間離れるだけで、こんな森林地帯があるなんて不思議に思う。
よくよく考えれば、アイシャとしてこの世に生を受けてから、一人での遠出は初めてだった。自由の効かない貴族令嬢の窮屈さは、前世の記憶があるだけに、ある種の不満をアイシャの心に植えつけていたらしい。
(いい気持ち……)
窓を少し開ければ、森の爽やかな香りが風にのり、車内を満たす。そして、その心地いい香りを肺いっぱいに吸い込めば、アイシャの気分も晴れ渡った。
爽やかな風を浴びながら、流れゆく森の風景を眺めながら、アイシャの頭に、ある疑問が浮かぶ。
馬車から見える森の景色は、迷ったら最後、抜け出せないと思わせる程の鬱蒼とした草木が生い茂っているのに、車道はきちんと整備され、森の中を走っているとは思えないほど揺れない。森の中でさえ、手入れが行き届いている様子は、ナイトレイ侯爵家の領地経営の素晴らしいさを物語っていた。
領地を持たない伯爵家と、持つことを許された侯爵家の格の違いをひしひしと感じる。
(本当、不思議よね。キースは、次期ナイトレイ侯爵なんだから、もっと格上の相応しいご令嬢が沢山いるでしょうに)
ノア王太子にしても、リアムにしても、アイシャよりも身分も教養も美貌も兼ね備えた令嬢を選び放題の立場なのだ。それなのに、なぜアプローチを仕掛けるのかさっぱり分からない。これは、アイシャ本人ではなく、リンベル伯爵家と縁戚になるメリットがあるから、と見て間違いない。
(じゃあ、ひとり娘の私には拒否権なんて無いじゃない!)
政略結婚の末路を思い悶々とする。
『結婚後は妻に見向きもしない夫は、いつしか愛人を家に囲い出す。妻は嫁ぎ先でも蔑ろにされ、愛人が大きな顔をし、妻は別邸に追いやられ、夫からも忘れ去られ、寂しい人生を送りましたとさ』
(――――あら? この人生最高じゃないかしら?)
別邸に追いやられてしまえば、アイシャの存在は居ないものと同じ。誰の目も気にせず、やりたい放題が出来る。
(これって……、好きな趣味に没頭出来るってこと!?)
田舎に引っ込んだら、前世の記憶を頼りに妄想人生を謳歌するも良し、たまに変装して街に出て、カフェでお茶をしながらイケメン観察するのも良し。薔薇色の人生が待っている。
後は、別邸に引っ込む前に、衣食住の心配がないよう交渉すればバッチリだ。
(ふふふ、政略結婚どんと来いだわ!! 相手を選ぶ権利はこちらにあるようだし、軽い気持ちで行きましょ♪)
単純なアイシャは、懸案事項が概ね解決し、ご機嫌な様子で馬車に揺られ、ナイトレイ侯爵家領地へと向かった。
リンベル伯爵家へと迎えに来たナイトレイ侯爵家の馬車に揺られ、アイシャは先日受け取ったキースからの手紙を読み返していた。
(この手紙、私に拒否権ないじゃない)
『一緒に過ごしませんか?』って言っているくせに、迎えの日にちまで指定してあるのだから、こちらの意見は聞いていないのと同じ。結局のところ強制連行すると言っているようなものだ。
(当日迎えに来た人に『行きません』って言ったら、どうするつもりだったのかしらね? まぁ、侯爵家相手にそんなこと出来ないけど)
迎えの馬車が到着した時、アイシャが逃亡しないように、黒い笑みを浮かべた母が、しっかりと監視していた事を思い出し身震いする。
(あぁぁぁ、私に逃げ道はないのね。なら、楽しまなきゃ損よ! ナイトレイ侯爵領ってどんな所かしら~♪)
根が楽観的なアイシャは、久々のバカンスに思いを馳せる。
車窓を流れる景色は、街を抜け、田園風景を抜け、いつしか鬱蒼と茂る森の中を進む。王都から数時間離れるだけで、こんな森林地帯があるなんて不思議に思う。
よくよく考えれば、アイシャとしてこの世に生を受けてから、一人での遠出は初めてだった。自由の効かない貴族令嬢の窮屈さは、前世の記憶があるだけに、ある種の不満をアイシャの心に植えつけていたらしい。
(いい気持ち……)
窓を少し開ければ、森の爽やかな香りが風にのり、車内を満たす。そして、その心地いい香りを肺いっぱいに吸い込めば、アイシャの気分も晴れ渡った。
爽やかな風を浴びながら、流れゆく森の風景を眺めながら、アイシャの頭に、ある疑問が浮かぶ。
馬車から見える森の景色は、迷ったら最後、抜け出せないと思わせる程の鬱蒼とした草木が生い茂っているのに、車道はきちんと整備され、森の中を走っているとは思えないほど揺れない。森の中でさえ、手入れが行き届いている様子は、ナイトレイ侯爵家の領地経営の素晴らしいさを物語っていた。
領地を持たない伯爵家と、持つことを許された侯爵家の格の違いをひしひしと感じる。
(本当、不思議よね。キースは、次期ナイトレイ侯爵なんだから、もっと格上の相応しいご令嬢が沢山いるでしょうに)
ノア王太子にしても、リアムにしても、アイシャよりも身分も教養も美貌も兼ね備えた令嬢を選び放題の立場なのだ。それなのに、なぜアプローチを仕掛けるのかさっぱり分からない。これは、アイシャ本人ではなく、リンベル伯爵家と縁戚になるメリットがあるから、と見て間違いない。
(じゃあ、ひとり娘の私には拒否権なんて無いじゃない!)
政略結婚の末路を思い悶々とする。
『結婚後は妻に見向きもしない夫は、いつしか愛人を家に囲い出す。妻は嫁ぎ先でも蔑ろにされ、愛人が大きな顔をし、妻は別邸に追いやられ、夫からも忘れ去られ、寂しい人生を送りましたとさ』
(――――あら? この人生最高じゃないかしら?)
別邸に追いやられてしまえば、アイシャの存在は居ないものと同じ。誰の目も気にせず、やりたい放題が出来る。
(これって……、好きな趣味に没頭出来るってこと!?)
田舎に引っ込んだら、前世の記憶を頼りに妄想人生を謳歌するも良し、たまに変装して街に出て、カフェでお茶をしながらイケメン観察するのも良し。薔薇色の人生が待っている。
後は、別邸に引っ込む前に、衣食住の心配がないよう交渉すればバッチリだ。
(ふふふ、政略結婚どんと来いだわ!! 相手を選ぶ権利はこちらにあるようだし、軽い気持ちで行きましょ♪)
単純なアイシャは、懸案事項が概ね解決し、ご機嫌な様子で馬車に揺られ、ナイトレイ侯爵家領地へと向かった。