転生アラサー腐女子はモブですから!?
「キース様。リンベル伯爵家のアイシャ様、まもなくエントランスへ到着なされます。お出迎えを」
「わかった」
はやる気持ちを抑え私室を飛び出す。階段を駆け下り、エントランスを抜け、外へと飛び出す。一瞬、エントランスで待機していたライアンの鋭い視線を感じたが、そんな些末なことにかまっている余裕はなかった。
到着した馬車が停まったのを確認し、扉へと駆け寄ると金のドアノブを握り開く。高鳴る鼓動を感じながら、手を差し伸べれば、己の掌の上に乗せられた白く美しい手に、理性が吹っ飛んだ。そして、衝動のままに、乗せられた手をつかみ引き寄せていた。
柔らかい身体が、己の胸へと飛び込んでくると同時に、陽だまりのような優しい彼女の匂いに包まれ、思わず強く抱き締めていた。
望んでも、望んでも、見ることすら叶わなかったアイシャが腕の中にいる。その現実が、ただただ嬉しかった。
苦しかったのか、背中を叩くアイシャの可愛い抵抗に、少し腕の力を緩めたが、抱きしめた彼女を離すことだけは出来なかった。
「あのっ、キース様! そろそろ、離してくれてもよろしいかと思うのです。わたくし、まだ挨拶もしておりません」
「挨拶など、どうでもいい。俺はアイシャとずっとこうしていたい」
キースは欲望のまま、彼女の望みを一蹴した。
抱き締めたアイシャの小さな身体と温もりに、泣きそうになる。ずっと望み続けた彼女が、腕の中にいる。ただ、それだけで幸せだった。
しかし、予想外の事が起こった。
キースを嫌っているはずのアイシャが、己の背中を優しく撫で、ポンポンとあやす様に叩いたのだ。その慰めるような、安心させるような手つきに、キースの心が震える。
(アイシャは、俺のことを嫌ってはいないのか?)
「俺をあおったのはアイシャだからな……」
胸いっぱいに広がる喜びのまま、彼女の唇を奪っていた。柔らかい唇を味わい、驚きに開いた唇の隙間から舌を伸ばし口腔を犯し、甘く魅惑的な唇を思う存分むさぼった。
ライアンに引き剥がされる寸前に見た彼女の紅く上気した頬に潤んだ瞳、今思い出しても堪らない。今すぐそばに行き、抱き締めたいと訴える欲望を必死に抑え込む。
(ケダモノだな……)
ここで焦っては全てが台無しになる。アイシャに嫌われていないと分かっただけ良しとしよう。
あと一週間。少しずつ彼女との距離を縮めていけばいい。
ノア王太子だろうと、リアムだろうとアイシャを譲る気はない。必ず手に入れる。
キースは、固い決意を胸に、愛しいアイシャの元へと向かった。
「わかった」
はやる気持ちを抑え私室を飛び出す。階段を駆け下り、エントランスを抜け、外へと飛び出す。一瞬、エントランスで待機していたライアンの鋭い視線を感じたが、そんな些末なことにかまっている余裕はなかった。
到着した馬車が停まったのを確認し、扉へと駆け寄ると金のドアノブを握り開く。高鳴る鼓動を感じながら、手を差し伸べれば、己の掌の上に乗せられた白く美しい手に、理性が吹っ飛んだ。そして、衝動のままに、乗せられた手をつかみ引き寄せていた。
柔らかい身体が、己の胸へと飛び込んでくると同時に、陽だまりのような優しい彼女の匂いに包まれ、思わず強く抱き締めていた。
望んでも、望んでも、見ることすら叶わなかったアイシャが腕の中にいる。その現実が、ただただ嬉しかった。
苦しかったのか、背中を叩くアイシャの可愛い抵抗に、少し腕の力を緩めたが、抱きしめた彼女を離すことだけは出来なかった。
「あのっ、キース様! そろそろ、離してくれてもよろしいかと思うのです。わたくし、まだ挨拶もしておりません」
「挨拶など、どうでもいい。俺はアイシャとずっとこうしていたい」
キースは欲望のまま、彼女の望みを一蹴した。
抱き締めたアイシャの小さな身体と温もりに、泣きそうになる。ずっと望み続けた彼女が、腕の中にいる。ただ、それだけで幸せだった。
しかし、予想外の事が起こった。
キースを嫌っているはずのアイシャが、己の背中を優しく撫で、ポンポンとあやす様に叩いたのだ。その慰めるような、安心させるような手つきに、キースの心が震える。
(アイシャは、俺のことを嫌ってはいないのか?)
「俺をあおったのはアイシャだからな……」
胸いっぱいに広がる喜びのまま、彼女の唇を奪っていた。柔らかい唇を味わい、驚きに開いた唇の隙間から舌を伸ばし口腔を犯し、甘く魅惑的な唇を思う存分むさぼった。
ライアンに引き剥がされる寸前に見た彼女の紅く上気した頬に潤んだ瞳、今思い出しても堪らない。今すぐそばに行き、抱き締めたいと訴える欲望を必死に抑え込む。
(ケダモノだな……)
ここで焦っては全てが台無しになる。アイシャに嫌われていないと分かっただけ良しとしよう。
あと一週間。少しずつ彼女との距離を縮めていけばいい。
ノア王太子だろうと、リアムだろうとアイシャを譲る気はない。必ず手に入れる。
キースは、固い決意を胸に、愛しいアイシャの元へと向かった。