転生アラサー腐女子はモブですから!?
「アイシャに、会わせたい人がいるんだ」

 キースとの初めての朝食が、和やかな雰囲気のまま終わりを迎え、お茶と食後のデザートをキースと共に楽しんでいる時だった。ドライフルーツがたっぷり練り込まれたマフィンに生クリームをたっぷりつけて、口に放り込んだアイシャに、キースが話しかける。

「あわへ、たい、ひと?」

「あぁ、すまない。タイミングが悪かった。先に、食べてくれ」

 口の中いっぱいに広がるドライフルーツの自然な甘みと酸味、そしてまろやかな生クリームの舌触りに誘惑されたアイシャは、キースの提案をありがたく受け入れ、思う存分、もしゃもしゃとマフィンを味わう。

(あぁぁ、美味しい。食後のデザートの、なんて贅沢なことか)

 家では、太ることを気にした母の徹底した食事管理のせいで、食後のデザートなど夢のまた夢。なんの制限もなくデザートを食べられる喜びにしばし浸る。

 お菓子を好きなだけ食べられるだけでも、ここに来た甲斐があったというものだ。

 そんなことを考えつつ、アイシャは目の前のマフィンを思う存分堪能する。そんな、彼女の様子をニコニコと笑みを浮かべ見つめるキースの存在にアイシャが気づいたのは、あらかたデザートを平らげた後だった。

(あら、やだ。キースの存在を忘れていたわ。確か、会わせたい人がいるとか、なんとか……)

「キース様、ごめんなさい。あまりにもデザートが美味しくて、夢中になってしまったわ」

「気にしないでくれ。美味しそうに食べているアイシャの姿を見ているだけで、幸せなんだ」

「なっ……、」

(なんて顔して笑うのよ)
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