転生アラサー腐女子はモブですから!?
「はい。存じています。今、考えても、歩み寄る努力をしなかったキースが全面的に悪いとは思いますが」
「そうね。当時は、私もそう思っていたわ。一年前、マクレーン伯爵家へ突然やって来て、父と私の前で土下座をしたキースを見るまではね」
「えっ!? 土下座をしたのですか?」
「ふふふ、えぇ。本当、驚いたわ。侯爵家の跡取り息子が、格下の伯爵家当主に土下座をしたのよ。普通じゃ、考えられないわ」
確かに、本来であれば有り得ない話だ。エイデン王国の侯爵家以上と伯爵家以下の間には、大きな差がある。領地を持つことを許された侯爵家と持たない伯爵家という差だけではなく、権力的にも、金銭的な裕福さにしても大きな隔たりがあるのだ。
上位貴族は、たとえ己が間違いを犯したとしても、格下貴族に謝ることはまずしない。己の威信に関わることだからだ。それは、貴族社会の常識だった。だからこそ、侯爵家の跡取り息子が土下座をしたという事実は大きな衝撃なのだ。
「それにね、何度も、何度もマクレーン伯爵家に通ってくれたの。体調を崩すようになった父の代わりに、伯爵家内を切り盛りするようになったばかりの私を、何度も助けてくれた」
「そうだったのですね。でも、不思議です。なぜ、ルイス様ではなく、キース様が?」
「もしかしたら、ルイスから頼まれていたのかもしれないわね。ほら、ルイスは騎士団の副長の仕事が忙しいでしょ。私も、伯爵家のことまで、ルイスに心配をかけたくなかったから」
確かに、騎士団の副長ともなれば、仕事は多岐に渡る。しかも、あの豪快な見た目の団長が、細々とした雑務を日々こなしているとは思えない。副長の仕事以外にも、団長の仕事のサポートまでしているとなると、忙しさは目が回るほどだろう。伯爵家のことまで気にしていられる状況ではない。
そこで、信頼のおけるキースに師匠は、自分の代わりにマクレーン伯爵家を助けるようにキースに頼んだのだろう。
(もしかしたら、奥さまとの関係改善も期待してのことだったのかもしれないけど)
「私も、キースと何度も接しているうちに絆されちゃったのね。始めは反感しかなかったけど、今さら謝りに来たって許すものかって。どうせ、格下貴族だと思って、見下してきたんでしょってね。でもね、その考えは、接している内に変わっていったの。あの子、不器用っていうか、根は真面目なのよね」
「そうですね。確かに根は真面目な方だと思います。ただ、少々思い込みが激しいというか、なんというか」
「そうね。だから、関係が拗れちゃったのかもしれないわ。まぁ、歩み寄る努力をして来なかった私にも責任はあるけど」
そう言って悲しそうに笑うマリアベル様の後悔の気持ちが伝わり、胸を切なく痛ませる。
「人って弱い生き物よね。自分の罪を認め、真摯に向き合うことが出来る人なんて、そうそういない。そういう意味でも、キースは強い心を持つ人なんだと思う。そして、アイシャさん、あなたもね」
「え? 私ですか?」
「えぇ。あなたは、ずっとキースと向き合ってきたでしょ、私とは違って。憎まれても、痛めつけられても、逃げることはしなかった。だから、キースの心に、あなたの言葉が響いた」
「いいえ、そんな大それたことはしていません。ただ、思っていたことをぶちまけただけですから」
「だけど、あなたのおかげで、あの子との関係が大きく変わったのは事実よ。だから、お礼を言いたかったの。本当にありがとう、アイシャさん」
瞳に涙を浮かべ微笑むマリアベル様に、深々と頭を下げられ、アイシャは慌てる。
「マリアベル様、頭を上げてください。本当に、お礼を言われるようなことは何もしていませんから。キースとの関係が改善されたのは、マリアベル様の寛容な心があったからです。私だったら、そう簡単に許せないですし」
「そうね。当時は、私もそう思っていたわ。一年前、マクレーン伯爵家へ突然やって来て、父と私の前で土下座をしたキースを見るまではね」
「えっ!? 土下座をしたのですか?」
「ふふふ、えぇ。本当、驚いたわ。侯爵家の跡取り息子が、格下の伯爵家当主に土下座をしたのよ。普通じゃ、考えられないわ」
確かに、本来であれば有り得ない話だ。エイデン王国の侯爵家以上と伯爵家以下の間には、大きな差がある。領地を持つことを許された侯爵家と持たない伯爵家という差だけではなく、権力的にも、金銭的な裕福さにしても大きな隔たりがあるのだ。
上位貴族は、たとえ己が間違いを犯したとしても、格下貴族に謝ることはまずしない。己の威信に関わることだからだ。それは、貴族社会の常識だった。だからこそ、侯爵家の跡取り息子が土下座をしたという事実は大きな衝撃なのだ。
「それにね、何度も、何度もマクレーン伯爵家に通ってくれたの。体調を崩すようになった父の代わりに、伯爵家内を切り盛りするようになったばかりの私を、何度も助けてくれた」
「そうだったのですね。でも、不思議です。なぜ、ルイス様ではなく、キース様が?」
「もしかしたら、ルイスから頼まれていたのかもしれないわね。ほら、ルイスは騎士団の副長の仕事が忙しいでしょ。私も、伯爵家のことまで、ルイスに心配をかけたくなかったから」
確かに、騎士団の副長ともなれば、仕事は多岐に渡る。しかも、あの豪快な見た目の団長が、細々とした雑務を日々こなしているとは思えない。副長の仕事以外にも、団長の仕事のサポートまでしているとなると、忙しさは目が回るほどだろう。伯爵家のことまで気にしていられる状況ではない。
そこで、信頼のおけるキースに師匠は、自分の代わりにマクレーン伯爵家を助けるようにキースに頼んだのだろう。
(もしかしたら、奥さまとの関係改善も期待してのことだったのかもしれないけど)
「私も、キースと何度も接しているうちに絆されちゃったのね。始めは反感しかなかったけど、今さら謝りに来たって許すものかって。どうせ、格下貴族だと思って、見下してきたんでしょってね。でもね、その考えは、接している内に変わっていったの。あの子、不器用っていうか、根は真面目なのよね」
「そうですね。確かに根は真面目な方だと思います。ただ、少々思い込みが激しいというか、なんというか」
「そうね。だから、関係が拗れちゃったのかもしれないわ。まぁ、歩み寄る努力をして来なかった私にも責任はあるけど」
そう言って悲しそうに笑うマリアベル様の後悔の気持ちが伝わり、胸を切なく痛ませる。
「人って弱い生き物よね。自分の罪を認め、真摯に向き合うことが出来る人なんて、そうそういない。そういう意味でも、キースは強い心を持つ人なんだと思う。そして、アイシャさん、あなたもね」
「え? 私ですか?」
「えぇ。あなたは、ずっとキースと向き合ってきたでしょ、私とは違って。憎まれても、痛めつけられても、逃げることはしなかった。だから、キースの心に、あなたの言葉が響いた」
「いいえ、そんな大それたことはしていません。ただ、思っていたことをぶちまけただけですから」
「だけど、あなたのおかげで、あの子との関係が大きく変わったのは事実よ。だから、お礼を言いたかったの。本当にありがとう、アイシャさん」
瞳に涙を浮かべ微笑むマリアベル様に、深々と頭を下げられ、アイシャは慌てる。
「マリアベル様、頭を上げてください。本当に、お礼を言われるようなことは何もしていませんから。キースとの関係が改善されたのは、マリアベル様の寛容な心があったからです。私だったら、そう簡単に許せないですし」