転生アラサー腐女子はモブですから!?

パーソナルスペースの縮め方

「アイシャは馬に乗ったことはあるだろうか?」

「えっ? 馬ですか? いいえ。乗ったことも触ったこともありません」

 ナイトレイ侯爵領へ来てから数日、毎朝の日課になりつつあるキースとの朝食の席で、おもむろに切り出された問いに、口に放り込んだ瑞々しいオレンジを咀嚼しながら、アイシャは答える。

「そうか。せっかくナイトレイ侯爵領へ来ているし、一緒に遠駆けでもしようかと思ってね。乗ってみたいって思わない?」

「馬ですか? 興味はありますが、初心者が簡単に乗りこなせるものではありませんよね?」

「まぁ、早駆けするのは、初心者には難しいと思うが、ゆっくり駆ける分にはさほど技術はいらないと思う」

「怖くないですか?」

「俺もサポートするし、危険はない。乗ってみるか?」

 何事も挑戦という。それに、ちょっと、馬にも興味がある。

「危険じゃないというなら、ちょっと乗ってみたいです」

「そうか。じゃあ、この後行こうか」

 そんな約束を朝食の席でしたキースとアイシャは、着替えを済ませ、邸宅から少し離れた場所にある(うまや)へと向かった。
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