転生アラサー腐女子はモブですから!?
男女のかけ引き
「アイシャ、無事に着いて良かった。夜会ぶりだね」
チーフクルーが立ち去れば、ソファに座り書類を見ていたリアムが立ち上がり、アイシャへと近づく。
「リアム様、この度は船旅にお誘い頂きありがとうございます。わたくし船旅は初めてですの。とても楽しみにしておりましたわ」
アイシャは、その場でカーテシーをとり、決まりきった挨拶をする。
「嫌だなアイシャ、そんな他人行儀なあいさつ、やめてくれ。私とアイシャは、幼なじみだろ」
「ふふ、それもそうね。ただ、意趣返しをさせてもらったつもりよ。私の知らない所で、色々と暗躍してたみたいだし。すっかり皆さまの策に嵌められてしまったわ」
ジト目で睨むアイシャを見て、リアムがクスクスと笑う。
「まいったなぁ~、アイシャに『愛している』って言ったのは、本心なんだけどな。まぁ、鈍感なお姫さまには、全く伝わっていなかったみたいだけどね」
「はっ? 鈍感なお姫さまって、失礼な」
「だって、そうだろう。夜会で言ったことも忘れているみたいだし。人気のない所で男と二人きりになると、どうなるか自覚した方がいい。あっという間に、喰われるぞってね」
「あっ!? ま、待って――――」
いっきにアイシャとの距離をつめたリアムに腰を抱かれ、顎に手をかけた彼に深いキスを落とされていた。驚きでわずかにあいた唇の隙間をぬい、口腔内へと侵入したリアムの舌に、己の舌を絡め取られ、吸われる。ジンっと背を駆けのぼった痺れに、アイシャの脳は思考を停止してしまった。
(まずい……、意識が遠のく)
「くくっ、アイシャは深いキスの仕方も知らないのかな? 鼻で息をしないと窒息するよ」
「――――へっ?」
痺れた頭ではリアムが言っている言葉が理解できない。
「もう一度教えてあげようか?」
アイシャの潤んだ瞳が、近づいてくるリアムの唇を捉えた時だった。『ボッボォ――――』と、出航を告げる汽笛の音に、やっと我に返ったアイシャはありったけの力を込め、リアムの胸を押した。
「リアム様! 離してくださいませぇぇぇ」
リアムの腕からどうにか逃げ出したアイシャは、バルコニーへと続く扉から外へと出る。手すりにつかまり、階下をのぞけば、甲板に出た沢山の乗客が、桟橋に集まる人々に手を振る光景が目に写る。どこからともなく降り注いだ紙吹雪が風に舞い、船上を特別な空間へと変貌させていた。
リアムとのキスで赤く上気した頬を、優しい潮風が撫でていく。徐々に落ち着きを取り戻したアイシャの心には不思議な高揚感が渡来していた。
(このドキドキは、船旅へのちょっぴりな不安とワクワク感から来るものよ!)
チーフクルーが立ち去れば、ソファに座り書類を見ていたリアムが立ち上がり、アイシャへと近づく。
「リアム様、この度は船旅にお誘い頂きありがとうございます。わたくし船旅は初めてですの。とても楽しみにしておりましたわ」
アイシャは、その場でカーテシーをとり、決まりきった挨拶をする。
「嫌だなアイシャ、そんな他人行儀なあいさつ、やめてくれ。私とアイシャは、幼なじみだろ」
「ふふ、それもそうね。ただ、意趣返しをさせてもらったつもりよ。私の知らない所で、色々と暗躍してたみたいだし。すっかり皆さまの策に嵌められてしまったわ」
ジト目で睨むアイシャを見て、リアムがクスクスと笑う。
「まいったなぁ~、アイシャに『愛している』って言ったのは、本心なんだけどな。まぁ、鈍感なお姫さまには、全く伝わっていなかったみたいだけどね」
「はっ? 鈍感なお姫さまって、失礼な」
「だって、そうだろう。夜会で言ったことも忘れているみたいだし。人気のない所で男と二人きりになると、どうなるか自覚した方がいい。あっという間に、喰われるぞってね」
「あっ!? ま、待って――――」
いっきにアイシャとの距離をつめたリアムに腰を抱かれ、顎に手をかけた彼に深いキスを落とされていた。驚きでわずかにあいた唇の隙間をぬい、口腔内へと侵入したリアムの舌に、己の舌を絡め取られ、吸われる。ジンっと背を駆けのぼった痺れに、アイシャの脳は思考を停止してしまった。
(まずい……、意識が遠のく)
「くくっ、アイシャは深いキスの仕方も知らないのかな? 鼻で息をしないと窒息するよ」
「――――へっ?」
痺れた頭ではリアムが言っている言葉が理解できない。
「もう一度教えてあげようか?」
アイシャの潤んだ瞳が、近づいてくるリアムの唇を捉えた時だった。『ボッボォ――――』と、出航を告げる汽笛の音に、やっと我に返ったアイシャはありったけの力を込め、リアムの胸を押した。
「リアム様! 離してくださいませぇぇぇ」
リアムの腕からどうにか逃げ出したアイシャは、バルコニーへと続く扉から外へと出る。手すりにつかまり、階下をのぞけば、甲板に出た沢山の乗客が、桟橋に集まる人々に手を振る光景が目に写る。どこからともなく降り注いだ紙吹雪が風に舞い、船上を特別な空間へと変貌させていた。
リアムとのキスで赤く上気した頬を、優しい潮風が撫でていく。徐々に落ち着きを取り戻したアイシャの心には不思議な高揚感が渡来していた。
(このドキドキは、船旅へのちょっぴりな不安とワクワク感から来るものよ!)