転生アラサー腐女子はモブですから!?

恋慕【リアム視点】

「ふふ、ははは……、あの程度で慌てるなんて、可愛い過ぎだろ」

 アイシャの初心な反応を思い出し、リアムの口元に自然な笑みが浮かぶ。

 キースと過ごした一週間で、アイシャの気持ちに変化があったかとカマをかけてみたが、あの調子だと何も無かったのだろう。キースがアイシャに、どんなアプローチを仕掛けたかは分からない。しかし、あの鈍感なアイシャが相手では、さぞかし手をこまねいた事だろう。

(まだまだ、チャンスはある。生温(なまぬる)いアプローチを仕掛けるつもりはない。一週間でアイシャの心に、私の存在を刻み込まねばならない)

 後に控えるノア王太子の存在が、リアムの心に重くのしかかる。

 あの御方が本気になれば厄介だ。地位も権力も女の扱いですら、勝てる自信がない。ノア王太子がアイシャを愛しているかと問われれば、今の段階では違うと言える。彼女自身が欲しいと言うよりも、次期王としての立場を確固たるものにするため、『白き魔女』を手に入れようと考えての行動だろう。

『白き魔女の恩恵を受けし伴侶は世界の覇者となる』か……

 エイデン王国に伝わる伝承を利用すれば、次期王としての立場は確固たるものになる。しかし、そんなもののためにアイシャを利用させるわけにはいかない。

 アイシャには、自分が『白き魔女』だと知らずに、幸せな人生を歩んで欲しい。

 彼女の素晴らしさは、(しがらみ)に囚われない自由な考えと、己の夢を実現させるために行動出来る強さにある。

『白き魔女』という柵に囚われてしまえば、アイシャの良さは失われてしまう。そして、あの輝くような笑顔も。

(アイシャには、自由に生きて欲しい……)

 ソファへと寝そべり、アイシャとの未来を考える。輝く笑顔を浮かべる彼女の隣にいるのは私であって欲しいと願いながら。
< 77 / 233 >

この作品をシェア

pagetop