転生アラサー腐女子はモブですから!?
(やはり、アナベル様は素敵な女性だわ)

 好きな男性のために、こんなにも身を呈して頑張れる女性は、なかなかいない。

(私だったら、好きな人のためでも、辛い妃教育なんて受けてらんないわ。しかも、相手が応えてくれるかも分からないのに)

 少々、激情型のアナベルだが、ノア王太子の事が絡むと、こうなってしまうのかもしれない。恋は人を狂わすとも言う。あの夜会での言動も致し方なかったのだろう。アナベルの本質は、努力家で思慮深く、皆の憧れに足るだけの存在感を放つ令嬢。

(ぜひ、お友達になりたい)

 アイシャは、デビュタントの夜会でアナベルに会ってからというもの、彼女とのお友達計画をずっと練ってきたのだ。あの日以来、使える伝手は全て使い、アナベルの人となりを調べ尽くした。

 アナベルは令嬢の憧れの的であり、淑女の(かがみ)と言われている。しかし、その地位に驕らず、傲慢になることもなく、上位貴族から下位貴族に至るまで、別け隔てなく接する姿は、素晴らしいの一言につきる。

 幼少期からノア王太子殿下の妃候補として、あらゆる知識を身につけ、その博識ぶりは他を寄せ付けないほどだと。親しい友人からの情報だと、王太子妃になるため、愛するノア王太子殿下と結ばれるため並々ならぬ努力を重ねて来たそうだ。ノア王太子殿下の妃として将来は立派な王妃になるだろうと言われていたらしい。

 そんな話を友人令嬢達から聞いたアイシャは、疑問に思っていた。

(なぜノア王太子は、完璧なアナベル様と言う存在がいるのに、私に求婚するなんてバカをやらかしたのか?)

 一応、ノア王太子の幼馴染みの端くれとして、彼の性格は把握しているつもりだ。

 ノア王太子の態度は、男女の駆け引きに疎いアイシャを揶揄って、反応を楽しんでいただけ。決して恋愛感情なんてものはない。

 しかし、公の場で二曲ダンスを踊り、アイシャに求婚した。これは政治的な思惑が絡んでいるとみて間違いないだろう。

 目の前で泣き崩れるアナベルを見て考える。

 この方こそ、ノア王太子殿下の妃となり国を支えるに相応しい人だ。誰かのために頑張れる人は滅多にいない。

(ノア王太子の政治的思惑から逃れる為にも、アナベル様を利用させて頂きます!)

 目の前で、泣き続ける彼女を見つめ、アイシャは不適な笑みを浮かべた。


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