転生アラサー腐女子はモブですから!?
「騎士になる夢を叶えるため、騎士団へと入団した私の行動を父は叱責した。将来、次期宰相となるための勉学を優先するように言われ、自分の夢と父からの圧力の間で板挟みになり、当時は、何事にも無気力な日々を過ごしていた」
アイシャの脳裏に過去の記憶が蘇る。
リアムを師と仰ぎ、剣の修行を始めた頃、無心に剣を振っていた彼を練習場の陰で見つけ、聞いたことがあった。なぜ、リアムは騎士を目指したのかと。あの時、彼はなんと答えただろうか?
何も思い出せない。それなのに、辛そうに歪められた瞳の色だけが、記憶に残っているのは、なぜだろう。
きっと、リアムはとても辛い状況に追い込まれていたのだ。親の過度な期待と己の夢の間で揺れ動く心を持て余し、剣を一心不乱に振ることでしか、複雑な心に折り合いをつけることが出来なかったのかもしれない。
「当時の私は、リアム様にひどい仕打ちをしていたのですね。自分の欲望を優先して、リアム様の心を傷つけていた。私に、剣を教えることは、辛かったのではありませんか?」
「そんなことはないよ。前にも言ったでしょ。アイシャと過ごした時間は、私にとってかけがえのないものだったって。それは、本心だよ。それにね、柵に囚われず足掻いてみたらいいとアイシャに言われ、目が覚めたんだよ」
「えっ? そんな大それたことは、しておりません」
「君にとっては、忘れてしまうくらい些末な出来事だったのかもしれないけど、アイシャの言葉があったからこそ、私は父に立ち向かえた。だから、感謝しているんだ」
そう言って、晴れやかな笑みを浮かべたリアムの顔を見て、アイシャの心の中で芽生えはじめた恋の炎がいっきに燃え上がる。
「そ、そうでしたの……」
「まぁ、当時の私は恥ずかしいくらいに、カッコ悪かったから忘れてくれていた方がいいけどね。アイシャには、今の私を見てもらいたい。アイシャの夢を叶えてあげられるだけの力はつけたつもりだよ。アイシャを幸せに出来るだけの力もね。それでもアイシャは、一人で生きていく道を選びたい? 私と結婚する未来は選んではくれないの?」
二人の視線が絡み、テーブルの上に置いていたアイシャの手が、再びリアムに握られる。
(リアムと結婚する未来……)
母が以前言っていた言葉が、アイシャの脳裏に浮かぶ。
『貴方に求婚している殿方は、アイシャの夢を理解してくださらない心の狭い方達なのかしら』
(リアム様は、私の譲れない趣味を知っても、今と同じように結婚したいと言ってくれるのだろうか?)
リアムとの心地よい関係性が、悪い方へと変わってしまうかもしれないと考えるだけ、手が震える。しかし、誰かと結婚する未来があるのであれば、己の趣味を理解し、認めてもらわねばならない。
(一歩、前へ進むために……)
覚悟を決めたアイシャは、目の前に座るリアムを見つめ切り出した。
『どうか、私の想いが伝わりますように』と、心の中で願いながら。
アイシャの脳裏に過去の記憶が蘇る。
リアムを師と仰ぎ、剣の修行を始めた頃、無心に剣を振っていた彼を練習場の陰で見つけ、聞いたことがあった。なぜ、リアムは騎士を目指したのかと。あの時、彼はなんと答えただろうか?
何も思い出せない。それなのに、辛そうに歪められた瞳の色だけが、記憶に残っているのは、なぜだろう。
きっと、リアムはとても辛い状況に追い込まれていたのだ。親の過度な期待と己の夢の間で揺れ動く心を持て余し、剣を一心不乱に振ることでしか、複雑な心に折り合いをつけることが出来なかったのかもしれない。
「当時の私は、リアム様にひどい仕打ちをしていたのですね。自分の欲望を優先して、リアム様の心を傷つけていた。私に、剣を教えることは、辛かったのではありませんか?」
「そんなことはないよ。前にも言ったでしょ。アイシャと過ごした時間は、私にとってかけがえのないものだったって。それは、本心だよ。それにね、柵に囚われず足掻いてみたらいいとアイシャに言われ、目が覚めたんだよ」
「えっ? そんな大それたことは、しておりません」
「君にとっては、忘れてしまうくらい些末な出来事だったのかもしれないけど、アイシャの言葉があったからこそ、私は父に立ち向かえた。だから、感謝しているんだ」
そう言って、晴れやかな笑みを浮かべたリアムの顔を見て、アイシャの心の中で芽生えはじめた恋の炎がいっきに燃え上がる。
「そ、そうでしたの……」
「まぁ、当時の私は恥ずかしいくらいに、カッコ悪かったから忘れてくれていた方がいいけどね。アイシャには、今の私を見てもらいたい。アイシャの夢を叶えてあげられるだけの力はつけたつもりだよ。アイシャを幸せに出来るだけの力もね。それでもアイシャは、一人で生きていく道を選びたい? 私と結婚する未来は選んではくれないの?」
二人の視線が絡み、テーブルの上に置いていたアイシャの手が、再びリアムに握られる。
(リアムと結婚する未来……)
母が以前言っていた言葉が、アイシャの脳裏に浮かぶ。
『貴方に求婚している殿方は、アイシャの夢を理解してくださらない心の狭い方達なのかしら』
(リアム様は、私の譲れない趣味を知っても、今と同じように結婚したいと言ってくれるのだろうか?)
リアムとの心地よい関係性が、悪い方へと変わってしまうかもしれないと考えるだけ、手が震える。しかし、誰かと結婚する未来があるのであれば、己の趣味を理解し、認めてもらわねばならない。
(一歩、前へ進むために……)
覚悟を決めたアイシャは、目の前に座るリアムを見つめ切り出した。
『どうか、私の想いが伝わりますように』と、心の中で願いながら。