転生アラサー腐女子はモブですから!?
「――――あ、あのね、リアム。私が、ずっと結婚したくないと思っていたのは、誰にも話していない趣味のせいなの。この趣味を強制的に辞めさせられる事を、私は何よりも怖れている」
「趣味?」
「えぇ。この国では、嫁入りした女性は、夫の言葉に逆らわず、貞淑な妻であることを求められる。家長である夫に趣味を咎められれば、辞めざる負えない。嫁ぎ先で、生き難くなってしまうから。だから、私は、誰にも邪魔されずに趣味を満喫するため、一人で生きて行く準備を、幼少期からして来た」
「しかし、妻の趣味を強制的に辞めさせる夫がいるだろうか? ご婦人方は、誰しも何らかの趣味を持っているものだろう。その趣味が、莫大な浪費を生んだり、世間的に後ろ指をさされるようなものでなければ、強制的に辞めさせることもないと思うが」
「私の趣味が、世間的に後ろ指をさされる可能性があるからよ。あの、あのね……、わたくし、男同士の恋愛を妄想するのが大好きなの!!」
とうとう、言ってしまった。己の趣味を暴露してしまった。
リアムの反応が怖すぎて顔をあげられないアイシャは、震えながらうつむくことしか出来ない。
沈黙が辺りを支配し、時間だけが過ぎていく。
(やっぱり、呆れられたのね。気持ち悪い女だって、思われてる。リアム様との友人関係も、終わりね)
終わりなく続く沈黙が心を押しつぶし、耐えきれなくなったアイシャは、とうとう顔を上げてしまった。そして、瞳に写った予想外の光景に、アイシャの目が点になる。
「――――えっ??」
アイシャの目の前には、笑いを噛み殺し、肩を震わせ笑うリアムの姿があった。
「ななな、なんで笑っているのよ!! わたくしが、決死の思いで告白しましたのに!」
リアムの態度に怒り心頭のアイシャは、あふれ出しそうになる涙を堪えることに必死だ。
(私の趣味は、笑いがこみ上げるほど、可笑しなものなの。私にとっては、大切な趣味なのよ! 生きがいなのよ!)
確かに、男性から見たら、気持ち悪い趣味なのかもしれない。ただ、笑われるほど、バカバカしい趣味ではない。腐女子をバカにするような男なんてこっちから願い下げだ。
座っていた椅子を蹴倒す勢いで、立ち上がったアイシャは、リアムを睨みつけ言い放つ。
「失礼致します! リアム様とは、今後一切、お会いしませんから!!」
怒り心頭のアイシャは、すぐに、その場を立ち去ろうとした。しかし、踵を返した次の瞬間、手を強い力で後方へと引かれ、バランスを崩す。そして、次に気づいた時には、リアムの膝の上へと倒れ込んでいた。
「なっ! 離して!!」
急に上がった視界と揺れに、リアムに抱き上げられたことに気づいたアイシャは、慌てて降りようと暴れる。しかし、次に発せられたリアムの低い威圧声に、ビクッと身体が固まった。
「少し黙って! 目立ち過ぎだ」
リアムの声に、大人しくなったアイシャは、周りを見まわす。興味津々で様子をうかがう、人人人の目。甲板の注目を一心に集めている状況に、冷や汗が背を伝い、落ちていく。
他人に関わらないという暗黙のルールがある甲板といえども、事件を起こせば、人の注目は集まる。しかも、いかにも貴族という出立の男女が言い合いをしていれば、それだけで悪目立ちしてしまう。
(マズいぃぃぃ……、ここはひとまず休戦ね)
アイシャは、リアムの首に腕を回し、不本意ながら一時休戦の意思を示したのだった。
アイシャを抱き上げ颯爽と歩くリアムの姿に、すれ違う人々の興味津々の視線が突き刺さる。顔を上げる勇気のないアイシャは、リアムの胸に顔を埋め、ただただ願う。この羞恥地獄が早く終わるようにと。
「趣味?」
「えぇ。この国では、嫁入りした女性は、夫の言葉に逆らわず、貞淑な妻であることを求められる。家長である夫に趣味を咎められれば、辞めざる負えない。嫁ぎ先で、生き難くなってしまうから。だから、私は、誰にも邪魔されずに趣味を満喫するため、一人で生きて行く準備を、幼少期からして来た」
「しかし、妻の趣味を強制的に辞めさせる夫がいるだろうか? ご婦人方は、誰しも何らかの趣味を持っているものだろう。その趣味が、莫大な浪費を生んだり、世間的に後ろ指をさされるようなものでなければ、強制的に辞めさせることもないと思うが」
「私の趣味が、世間的に後ろ指をさされる可能性があるからよ。あの、あのね……、わたくし、男同士の恋愛を妄想するのが大好きなの!!」
とうとう、言ってしまった。己の趣味を暴露してしまった。
リアムの反応が怖すぎて顔をあげられないアイシャは、震えながらうつむくことしか出来ない。
沈黙が辺りを支配し、時間だけが過ぎていく。
(やっぱり、呆れられたのね。気持ち悪い女だって、思われてる。リアム様との友人関係も、終わりね)
終わりなく続く沈黙が心を押しつぶし、耐えきれなくなったアイシャは、とうとう顔を上げてしまった。そして、瞳に写った予想外の光景に、アイシャの目が点になる。
「――――えっ??」
アイシャの目の前には、笑いを噛み殺し、肩を震わせ笑うリアムの姿があった。
「ななな、なんで笑っているのよ!! わたくしが、決死の思いで告白しましたのに!」
リアムの態度に怒り心頭のアイシャは、あふれ出しそうになる涙を堪えることに必死だ。
(私の趣味は、笑いがこみ上げるほど、可笑しなものなの。私にとっては、大切な趣味なのよ! 生きがいなのよ!)
確かに、男性から見たら、気持ち悪い趣味なのかもしれない。ただ、笑われるほど、バカバカしい趣味ではない。腐女子をバカにするような男なんてこっちから願い下げだ。
座っていた椅子を蹴倒す勢いで、立ち上がったアイシャは、リアムを睨みつけ言い放つ。
「失礼致します! リアム様とは、今後一切、お会いしませんから!!」
怒り心頭のアイシャは、すぐに、その場を立ち去ろうとした。しかし、踵を返した次の瞬間、手を強い力で後方へと引かれ、バランスを崩す。そして、次に気づいた時には、リアムの膝の上へと倒れ込んでいた。
「なっ! 離して!!」
急に上がった視界と揺れに、リアムに抱き上げられたことに気づいたアイシャは、慌てて降りようと暴れる。しかし、次に発せられたリアムの低い威圧声に、ビクッと身体が固まった。
「少し黙って! 目立ち過ぎだ」
リアムの声に、大人しくなったアイシャは、周りを見まわす。興味津々で様子をうかがう、人人人の目。甲板の注目を一心に集めている状況に、冷や汗が背を伝い、落ちていく。
他人に関わらないという暗黙のルールがある甲板といえども、事件を起こせば、人の注目は集まる。しかも、いかにも貴族という出立の男女が言い合いをしていれば、それだけで悪目立ちしてしまう。
(マズいぃぃぃ……、ここはひとまず休戦ね)
アイシャは、リアムの首に腕を回し、不本意ながら一時休戦の意思を示したのだった。
アイシャを抱き上げ颯爽と歩くリアムの姿に、すれ違う人々の興味津々の視線が突き刺さる。顔を上げる勇気のないアイシャは、リアムの胸に顔を埋め、ただただ願う。この羞恥地獄が早く終わるようにと。