満月の夜に〜妹に呪われてモフモフにされたら、王子に捕まった〜
これから
シオン殿下が部屋を出て行ったので、一先ず今後の事を、冷静に考える事にした。
まずウサギは野菜や果物は主食ではなく、牧草などを、主に食べるらしい事は知っている。
なのでそろそろ私は、草を食べた方がいい時期なのかもしれない。
「……」
出来れば草を食べるという、本格的に人間を止める前に、元の姿に戻りたいに決まっている。
だけど、そもそも本当に元に戻れるのかしら……?
今私はシオン殿下の部屋に一羽きり。
取り敢えず今後の事を考えて、人間に戻れた時のために、何かシオン殿下の弱みの一つでも握っておきたい。なんて事を思ってしまった。
(恥ずかしいポエムとかないかしら?部屋の中なら、自由にしても良いと言われているし。そうさせて頂くわ)
弁明をすると、私は決して今まで生きてきて、人様の持ち物を漁った事など一度たりともない。
現在呪われた身の私としては、今後無事人間に戻れた際、生き延びるための武器になりうる手数は多い方がいいと思っている。
そう心中で言い訳をしながら。
妹のフェリアに呪いを掛けられた直後、フェリアと殿下が、私の愚痴を言い合ってたのを思い出す。殿下も私の事が邪魔だと思っている可能性がある。
私は、部屋を見渡した。
そこで目に付いたのは、植物の美しい浮き彫り加工が施された、オーク材の執務机。
まず私は、執務机に備え付けられた椅子に飛び乗った。そして椅子の上で立ち上がって、上半身を机の上に乗り上げた。
ウサギって中々、身体が伸びる。
(何かないかしら?ポエムポエム〜、出来るだけ身悶えするくらい、恥ずかしいやつ!)
シンプルに整えられたこの部屋の中で、唯一小物が多く飾られている印象の執務机。
すぐに視界に飛び込んで来たのは、ペンにマゼンタ色のリボンが蝶々結びで飾られたもの。
異質に感じる。
(何故、ペンにリボン??マゼンタ色のリボン……)
何かがひっかかり、頭の中を探ってみる事に。
私は記憶の奥底にあった、小さく儚いカケラを拾い上げるように、とある出来事を思い出した。
それは昔。当時私達が5、6歳の頃。王宮で開かれた園遊会の最中、飽きてしまった私は一人庭の隅で遊んでいた。その時私の頭の左右に飾られていたリボンの片方が、風に飛ばされてしまった事があった。
焦ってマゼンタのリボンを追いかけたものの見当たらず、落胆していると、シオン殿下と鉢合わせた。
そして視線を下げてみると、シオン殿下の上着のポケットから、私のリボンの紐が出ていた。
すかさず私はシオン殿下に尋ねる。
「殿下、それ私のリボンですよね?」
「何の事だ。僕は知らない」
しらばっくれられた。
たまにシオン殿下は、私にこうした意地悪をする。
きっと私の事が気に入らないのだろう。
「ポケットから出ています」
指を指して指摘すると、彼は焦ってリボンをしまい直して、雑な隠蔽をはかった。
「知らないと言っているっ」
「返してくださいっ」
押し問答しながらの掴み合いの最中、珍しく殿下はいい事を思いついたとばかりに、満面の笑みを浮かべた。
「し、知らない!そうだ、リボンを無くしてしまったのなら、僕が新しいリボンを贈ってやろう。欲しい物を好きなだけ!」
その言葉に、私はピタリと身体の動きを止め、にべもなく答える。
「え、いりませんよ。ソレがいいので、さっさと返してください」
「……」
結局リボンは返ってこなかった。
まずウサギは野菜や果物は主食ではなく、牧草などを、主に食べるらしい事は知っている。
なのでそろそろ私は、草を食べた方がいい時期なのかもしれない。
「……」
出来れば草を食べるという、本格的に人間を止める前に、元の姿に戻りたいに決まっている。
だけど、そもそも本当に元に戻れるのかしら……?
今私はシオン殿下の部屋に一羽きり。
取り敢えず今後の事を考えて、人間に戻れた時のために、何かシオン殿下の弱みの一つでも握っておきたい。なんて事を思ってしまった。
(恥ずかしいポエムとかないかしら?部屋の中なら、自由にしても良いと言われているし。そうさせて頂くわ)
弁明をすると、私は決して今まで生きてきて、人様の持ち物を漁った事など一度たりともない。
現在呪われた身の私としては、今後無事人間に戻れた際、生き延びるための武器になりうる手数は多い方がいいと思っている。
そう心中で言い訳をしながら。
妹のフェリアに呪いを掛けられた直後、フェリアと殿下が、私の愚痴を言い合ってたのを思い出す。殿下も私の事が邪魔だと思っている可能性がある。
私は、部屋を見渡した。
そこで目に付いたのは、植物の美しい浮き彫り加工が施された、オーク材の執務机。
まず私は、執務机に備え付けられた椅子に飛び乗った。そして椅子の上で立ち上がって、上半身を机の上に乗り上げた。
ウサギって中々、身体が伸びる。
(何かないかしら?ポエムポエム〜、出来るだけ身悶えするくらい、恥ずかしいやつ!)
シンプルに整えられたこの部屋の中で、唯一小物が多く飾られている印象の執務机。
すぐに視界に飛び込んで来たのは、ペンにマゼンタ色のリボンが蝶々結びで飾られたもの。
異質に感じる。
(何故、ペンにリボン??マゼンタ色のリボン……)
何かがひっかかり、頭の中を探ってみる事に。
私は記憶の奥底にあった、小さく儚いカケラを拾い上げるように、とある出来事を思い出した。
それは昔。当時私達が5、6歳の頃。王宮で開かれた園遊会の最中、飽きてしまった私は一人庭の隅で遊んでいた。その時私の頭の左右に飾られていたリボンの片方が、風に飛ばされてしまった事があった。
焦ってマゼンタのリボンを追いかけたものの見当たらず、落胆していると、シオン殿下と鉢合わせた。
そして視線を下げてみると、シオン殿下の上着のポケットから、私のリボンの紐が出ていた。
すかさず私はシオン殿下に尋ねる。
「殿下、それ私のリボンですよね?」
「何の事だ。僕は知らない」
しらばっくれられた。
たまにシオン殿下は、私にこうした意地悪をする。
きっと私の事が気に入らないのだろう。
「ポケットから出ています」
指を指して指摘すると、彼は焦ってリボンをしまい直して、雑な隠蔽をはかった。
「知らないと言っているっ」
「返してくださいっ」
押し問答しながらの掴み合いの最中、珍しく殿下はいい事を思いついたとばかりに、満面の笑みを浮かべた。
「し、知らない!そうだ、リボンを無くしてしまったのなら、僕が新しいリボンを贈ってやろう。欲しい物を好きなだけ!」
その言葉に、私はピタリと身体の動きを止め、にべもなく答える。
「え、いりませんよ。ソレがいいので、さっさと返してください」
「……」
結局リボンは返ってこなかった。