【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
抱き上げられたまま真っ赤になっている私をしばらく見下ろしていたジェラルド様は、なぜか小さなため息をついたあと、椅子に座らせてくれた。
「……あの、椅子には自分で座れます」
それは、昨日も告げたひと言だ。
子ども扱いされている間は、私たちの距離は決して縮まらないに違いない。
けれど、ジェラルド様は柔和な微笑みを向けるばかりだ。
「……そうだな。しかし私は、少々甘えるのが苦手な君を甘やかしたいんだ」
「えっ……」
普段であれば完璧に整えられていた髪も、自分でハーフアップにまとめただけだ。
だって、なぜか屋敷の中に使用人が一人も見当たらないのだから……。
それなのに、洗いざらしに近い髪を一房持ち上げたジェラルド様は、そこに口づけを落とす。