【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
それは、いつか王太子妃教育の合間に隠れて読んだ騎士と姫君の物語の一幕みたいな光景だった。
お姫様役が、地味な私というのは残念だけれど、間違いなくジェラルド様は騎士様の役にふさわしい。
「――――私がいなければ、ダメになってくれないかな?」
「……えっ、ええ!?」
冗談だとわかってはいても、混乱してしまうし、動揺してしまう。
でも、ジェラルド様は、知らないのだろうか……。
「冗談だとは理解していますが……。私は、すでにジェラルド様がいないと、ダメですよ?」
「…………」
ジェラルド様が、髪の毛をつまみ上げたまま、わかりやすいほど動きを止めてしまった。
冗談を真に受けて、答えてしまったことで、困らせてしまったのだろうか。
「君は時々、私の心臓を無自覚に仕留めに来るな……」
「心臓?」
「そう、一緒に過ごしてきた時間など、ほんの刹那に違いないのに、何度も」