【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
「レザン様は、王家の影らしくなかったです」
「……」
そう、レザン様は変わっていた。
王家の影は、基本的に王族の周辺を日夜守っているけれど、姿を現わすことは少ない。
それについては、レザン様も同じだったけれど……。
「赤ワインをかけられてドレスを汚されれば、それよりも何倍も上等なドレスをすぐ届けてくれましたし……。靴に泥を塗られてしまったときは、汚れることがない銀の竜のうろこを使った靴を用意してくれました。恥をかくどころか、逆に羨望のまなざしで見られたくらいです」
「……」
王家の影だから、監視対象者の行動が王家の品位を落とさないようにそんなことをしてくれるのだと、思っていたのだけれど……。
仲が良かった第三王女殿下レイレア様と話したとき、王家の影が、そんなことまでしてくれるはずがないと言っていた。
「……令嬢たちのお茶会で嫌がらせされ、苦手な食べ物ばかりお皿にのせられたときも、そっとすり替えてくれましたし」
「──そこまでは、指示していないが」
「つまり、ドレスや靴については指示をしたと……?」
「……」
ちらりと、レザン様に視線を向けると、いつも通り完全に無表情なのに親指を立ててきた。
そう、王家の影はみんな無表情だ。でも、レザン様は、わかりやすい。いや、私の前でだけ、わかりやすいようにしてくれている。