【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
「笑顔……」
「王家の影でないのなら、もう奥様の前で感情を隠す必要は、ないですから」
「えっ、あの!」
「楽しくなりそうです」
片手で顔を隠し、その手がどけられれば、そこにいたのはいつもの無表情なレザン卿だ。
先ほど見たのは、幻だったのだろうか。
「さあ、行きましょうか」
「えっと、どこに」
聞きながら、もしかすると、という予感が拭えない。だって、この話の流れで、向かう場所なんて一つしかない。
「ずっと、ジェラルド殿下のご命令を受けながら、納得いかなかったのです」
「何が……」
「だってそうでしょう? 邪魔者が行く手を阻むなら、奥様のためにも、もっと早く俺を利用するべきだったんです。奥様なら、俺の力を活用してくださいますよね?」
「……えっ?」
グイッと手が引かれる。
すると、目と鼻の先に、水をまとった白い豹がいた。間違いない、水の精霊ウィランドラだ。
「ほら、ウィランドラも力になりたいと言っています」
『ガゥ!』
「……はじめまして、ウィランドラ」
『ガウガウ!!』