【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
「レザンがどう言ったかは知りませんが、夫の仕事場を訪問する。これは、妻にとっての戦と言っても過言ではありません」
キラリ、とドルアス様の瞳が光る。
ある意味、戦には違いない。
私は、今まで王太子妃として知り得たすべての貴族の弱みや秘密を暴露する覚悟で、ジェラルド様の元に向かおうとしているのだから。
「さあ、このレテリエにお任せ下さい。私たちの奥様こそが、王国一の貴婦人だと、知らしめて差し上げましょう!」
「え? 目立たない格好のほうが、良いのでは?」
引きずられる勢いで、クローゼットルームに連れ去られる私。
なぜか、視線の向こうでは、ドルアス様が笑顔のままレザン卿に詰め寄っている。
「……まだまだ、未熟な貴様では、奥様の立場をお守りしながら王宮に行くなどできまい。今回は、見学しているように」
「そんな、ドルアス様!」
「ふむ、このドルアスに逆らうか?」
不穏な会話そのものだ。
いつも執事長らしく、柔和な笑みを浮かべているドルアス様には、何か秘密があるのだろう。
「レザン卿は、長年、王家の影を勤めていたのよね。でも、二人はまるで長年の戦友のようだわ……?」
「ふふ、さすが奥様です」
「レテリエ……?」
「でも、今は、最高の貴婦人としての武装のための時間です」
「武装……」