【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
今度靴を買ってもらうときは、もっとヒールの高い靴にしてもらおう.
一生懸命背伸びしても、私たちの背は違いすぎるから。
少しでも、ジェラルド様に近づけるように……。
ジェラルド様が、私に合わせて背中を曲げる。
目を閉じた私の唇に、触れるか触れないかの口づけ。
その感触は、淡雪みたいに儚く、ほんの一瞬で溶けて消えてしまう。
胸の鼓動を鎮めるすべを知らないまま、そっと目を開ければ、ジェラルド様は穏やかに微笑んでいた。
「──あと、もうすこし待つくらい、どうということはない」
「ジェラルド様、私は」
「これからも、君を守る盾でいたいんだ」
「……それなら私だって」
その言葉の続きは、長くて節くれ立った指先にそっと押さえられてしまった。
「君の行動は予想がつかないから、心配のあまり心臓が持たない。……黙って守られていなさい」
「……」
「わかったね?」
もちろん、心の中ではジェラルド様を守りたい気持ちは消えたりしない。
けれど、困ったように笑うその表情が好きすぎて、口から心臓が飛び出そうで、それどころではなく、今日も私はぶんぶん首を縦に振ることしかできなかったのだった。