【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
少しだけ、騎士団長としての仮面をずらしたバルトが、ステラに興味を示すだけで、いらだつ私の心は狭いに違いない。
それに戦場にその身を置く彼も遠目が効く。
にもかかわらず、メガネはまだ必要ない。
腹立たしいことこの上ない。
窓に視線を向けると、ちょうどステラがもう一度双眼鏡を当てたところだった。
こちらは、すでに見られていることに気がついているというのに無邪気なものだ。
遠くがよく見えるように眼鏡を外して、彼女を見つめ軽く首を傾げる。
驚いたように彼女は双眼鏡を外し、少し慌てているようだ。
微笑んでしまったのは、そんな彼女が可愛すぎるからに相違ない。
さて、さっさとこのつまらない会議を終わりにして、彼女を迎えに行くとしよう。
あの場所では、可憐な彼女の姿に、周囲の視線が集まってしまうに違いない。
「……軍部の最高責任者という立ち位置に未練などなかったが、守るために必要とあれば、しがみつくのも悪くない」
微笑んだまま、そんなことを呟いた私に、その本気を感じたのだろう。
会議に参加した者たちの顔色は悪くなるばかりだ。
そう、ステラを守るためなら、手段を選んだりはしない。
────この場の指揮権は、もちろん私にあるのだ。