【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜

 もう一度、息もできないくらい抱きしめられた。
 柔らかい香りがする。ジェラルド様から香るのは、針葉樹のような落ち着いた、大人の香りだ。
 抱きしめられたら、苦しくなるくらい幸せで、ときめくのに、なぜかとても怖い。

「ステラ……。そうだ、申し訳ないが、やはり思った通りだった」
「……ジェラルド様?」
「夜になると不安定になる加護の力は、君の姿ばかり見せる」
「――――えっと、それは」
「君に気がつかれたくなかった、いつでも君の前では見栄を張りたいようだ」

 それは、良いことなのだろうか。ジェラルド様は、完璧な王太子殿下で、いつでも優しく微笑みかけてくれた。けれど、婚約破棄されたあの日から、日々その印象は塗り替えられていく。
 ジェラルド様が見ている過去や未来が幸せなものなのか、それとも私も見せられた悲しい場面なのかわからないけれど……。

「私も、今のジェラルド様が好きです」
「そうだな。君は私の妻になったのだから、完璧な自分を演じるなんて、もうやめよう」
「可愛いジェラルド様が、好きですよ?」
「私が可愛いなんて言うのは、きっと生涯君だけだろうな」
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