【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜

精霊の見せる夢 ※ジェラルド視点


 ────精霊ルルードとリーリルは、古い文献に加護を与えた者に、未来と過去を見せると書かれている。しかし、二体がそろったときに何が起こるかは、前例がなく謎に包まれている。

 そして現在、私は二体そろったときに起きる出来事を体験していた。

「────はあ、ステラ」
『ジェラルド様!!』

 白い小さな花を持ったステラが、私にそれを差し出した。
 子どもの摘んできた、束ねただけの花束。
 けれど、私はその花を笑顔で受け取る。

 こんなに嬉しく、心のこもった贈り物など、未だかつて誰かから受け取ったことがない。
 王族は、家族であると同時に王位を巡り時に命のやりとりをするような仲だ。
 親しいと言うにはほど遠いその関係、私はきっと母が亡くなって以降、誰かを無条件に愛することを知らずにいたに違いない。

「……すまない。今すぐお返しができないんだが」

 幼い少女であっても、ステラは、王太子の婚約者。
 大々的に、私がステラに何かを贈ることなど許されるはずもない。
 もちろん、目の前の少女は、何かお礼が欲しくて私に小さな花束を差し出しているわけではない、とわかっている。
 だが、それは私にとってはとても価値がある物で、何かを返したかった。
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