【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
差し伸べた指先は、何にも触れることがなく、赤い光とともに消えてしまう。
そして、ようやく目の前に繰り広げられていた光景が、精霊リーリルの加護によるものだったときがつく。
視界に映る自分の手は、思ったよりもしわが増えて年老いているから……。
「……ジェラルド様!」
そう、加護の力に呑まれてはいけない。青い光に呑まれてしまえば、それでもこの世界が現実なのか幻なのか、判断することは難しい。
古い文献には、記されている。ときに、ルルードやリーリルの加護を受けた者は、眠ったまま目覚めることがなかったと。
────それはきっと、美しく懐かしい、過去や未来に心奪われてしまったからなのだろう。
現に、今私に向かって微笑んでいる少し大人びたステラは、今すぐに抱き寄せてしまいたいほど美しい。
幸せそうに微笑んで、今よりも遠慮なく近い私との距離。
そして、彼女の胸元に光るのは、チェーンで下げられた図書室の鍵だ。
それは、知らないうちに心の奥底で求め続けた未来。
きっと、今すぐにでもステラを手に入れたい私にとって、何よりも大きな誘惑に違いない。