【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
幻を見続けていながらも、本物の君に会いたかったのだと、もう一度思い知らされる。
熱のせいなのだろうか。思わず押し倒してしまいそうになるのをかろうじてこらえる。
「……君がいる。手に入れたくて、気が狂いそうだ」
「私は、ジェラルド様の妻ですよ?」
だが、私は、ただ君を大切に甘やかして、幸せになれるように守りたいんだ。
「……幻の中にいる、愛らしい子どもだった君は可愛いし、子どもたちに囲まれて少しだけ今よりも大人びた君は魅力的だ。……でも、目の前にいる何も知らない君が愛しい」
「ジェラルド様……?」
起き上がるだけで、体が言うことを聞かずに揺れる。
そのことに苦笑しながら、汗で張り付いてしまった前髪を掻き上げる。
「……今の私にとっては、目の前にいる君が本物だ」
それにしても、柔らかく甘い香りだ。
現実世界の君は、本当に愛しくて、どんなに幻の世界が美しくても、この場所にしがみつきたくなる。