【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
その言葉の直後、私の正体に思い当たったのだろう。ステラ嬢は目を見開いた。
「ジェラルド・ラーベル王弟殿下……」
幼いのに賢いな、と感心していると、ステラ嬢は淑女たちを見慣れている私でも驚くほど美しい礼を披露してみせた。
先ほどまで泣いていた幼い姿が浮かぶ。少しだけ気の毒になって、甘やかしてみたくなる。
「……ステラ嬢。美しい礼だけれど」
ステラ嬢は、先ほどよりもさらに震えた。
怒られると思ったのだろうか。しかし、それすら小動物のようで可愛らしい。
「君はまだ子どもだから、そんなふうにかしこまるよりも、素直に甘えたらいい」
「え……?」
久しぶりに、誰かに笑いかけたな……。
そんなことを思いながら、その頭を撫でる。
そういったことに慣れていないのか、ステラ嬢は頬を染めた。
それが、ステラ嬢と私の出会いだった。
まさか、二十歳以上も年が離れたその少女と、十年後に結婚することになるなんて、そのときは思ってもみなかった。