【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
先ほどまでの気安い雰囲気は、なりをひそめて、目の前に立つのは厳格で寡黙ないつもの騎士団長バルト卿だ。
私もよく知るその姿。王国に彼のファンだという貴婦人や令嬢は、星の数ほどいる。
「……ジェラルド殿下、そしてステラ様、此度は精霊に愛されたお二人が結婚されたこと、騎士団長として、このバルト、心からお喜び申し上げます」
「ああ、感謝する」
このやり取りなんて、物語の一場面にしか見えない。二人の周囲だけ、高貴な薔薇が咲き誇っているみたいな空気だ。
自分にも向けられた言葉だってことを忘れ去って、そのやり取りをキラキラした瞳で見てしまった。私は人生のあれこれを今この瞬間、取り返したに違いない。幸せだ。
無表情に近かったバルト卿は、次の瞬間ニカリと人好きのする笑みを見せた。
その瞬間、高貴な赤い薔薇が、まるで咲き誇る大輪のダリアみたいな印象へと変わる。