【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜

 握りしめたこぶしが傷ついて、血がしたたり落ちる。
 ギリリと怒りのあまりに噛みしめた歯が、音を立てる。
 この怒りは、いったいどこに向けられたものなのか。

 精霊はときに、気まぐれに人生の先を教えてくれる。
 難局にあっても生き延びることができたのは、その力があったからだ。

 気がつかない振りをして、人生を終えようと決めていたのに。
 この国のという言葉を言い訳に、ただ彼女の剣として、盾として生きていこうと誓っていたのに。

「バルト、すまないがこの場の全権を任されてくれ」
「……は?」

 王族を現わす紋章が彫り込まれたマントの留め具を押しつける。

「これは命令ではない、一生に一度の願いだ。頼む……!!」
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