【電子書籍・コミカライズ決定】イケオジ王弟殿下との白い結婚〜君を愛するつもりはないと言われましたが、なぜか旦那様は過保護に溺愛してきます〜
いつの間にか、使用人たちも下がってしまったようだ。
食堂には、食事を終えた私たちだけが、取り残される。
「さ、そろそろステラも部屋に戻りなさい」
「……ジェラルド様」
「……なぜ泣く、ステラ」
婚約破棄されて、命の危機にさらされても泣くことがなかった。泣かなすぎて、可愛くない女だと周囲に言われていたくらいだ。
それなのに、どうしてこんなに簡単に涙がこぼれてしまうのか、私にもわからない。
戸惑ったような無骨な指先が、私の頬に触れて涙を拭う。
潤んでしまった視界の中で、金色の光が揺れているのは、まるで湖に映し出された月みたいだ。
そんなことを思いながら、一度強くまぶたを閉じる。
「どうして……。ジェラルド様に、私は何もしてあげたことがないのに、いつも助けてくれるんですか?」
王太子の婚約者としてせめてジェラルド様の前で、恥じない自分でいたいということだけが、いつだって私の支えだった。