a Piece of Cake.
ここで張ってればいつかは会えるかも。
そんな思考に陥り、振り払った。
わたしは、あの夜に出会った人を捜している。
きちんと御礼を言いたくて。
ケーキを作っていると言っていたし、何となく近所のケーキ屋さんを周っていたけれど、今まで全くヒットしなかった。
そして漸く今日、場所が分かった。
まあでも、会えないならもう仕方ないか。
「正直言って、迷惑」
その言葉にどきりとして、声の方を見た。
曲がり角の向こうから、それは聞こえる。
「店に来られても困る。止めてくれって言ってるよな」