a Piece of Cake.
「ケーキ、食べますか」
尋ねられ、理解するのに十秒はかかった。
「え?」
「売れ残りなんですけど。種類は五種」
「いや、あの大丈……」
「ケーキ、嫌いですか?」
誰なのか分からない人に、ケーキを押し売りされている。
戸惑うより先に、キュルキュルとお腹が鳴った。
「食べますうううう」
わっと泣きながら返答をしたわたしに、その人は驚きながらも逃げずに、隣に座ってケーキの箱を置いた。
「美味しそう……」
泣きながらそれを覗く。滲む視界を何度も拭ったので、アイシャドウは落ちていた。