a Piece of Cake.
マドレーヌは奈緒さんと湊ちゃんと松居さんにお裾分けしよう。
レモンケーキも美味しそう。
プリンを詰めてもらっている時間、焼き菓子コーナーを見ていると「いらっしゃいませ」と静かな男性の声が聞こえて顔を上げてしまった。
上げて、しまった。
目がばちりと合い、しまった、と静かに目を逸らす。
「うわ、無視された」
「え、お知り合い?」
聡現くんの言葉に、女性店員さんが視線を向ける。
「目は逸しましたけど、無視は……」
「電話待ってたんですけど」
まさか待っていたとは思わず、顔をそちらに向ける。