a Piece of Cake.
ケーキは殆ど売り切れており、空のショーケースの寂しさを知る。ここにあんなに一杯ケーキが並べるのすごいなあ。
いつもの店員さんが出迎えてくれて、挨拶を返した。
焼菓子コーナーからマドレーヌの詰め合わせを取る。
お会計をしていると、厨房から聡現くんが顔を出した。
「依理須さん、オマケです」
紙ナプキンで包まれたそれを差し出され、反射的に受け取った。
バターの良い香り。
「焼き立てフィナンシェだ。ラッキーですね」
店員さんが笑顔を見せる。
「え、良いんですか?」
「焼き立ての時間に合ったお客様にお出ししてます」
ケースの上に置かれたメニュー立てに焼き立てフィナンシェの値段が書かれていた。