a Piece of Cake.

ケーキは殆ど売り切れており、空のショーケースの寂しさを知る。ここにあんなに一杯ケーキが並べるのすごいなあ。

いつもの店員さんが出迎えてくれて、挨拶を返した。

焼菓子コーナーからマドレーヌの詰め合わせを取る。
お会計をしていると、厨房から聡現くんが顔を出した。

「依理須さん、オマケです」

紙ナプキンで包まれたそれを差し出され、反射的に受け取った。

バターの良い香り。

「焼き立てフィナンシェだ。ラッキーですね」

店員さんが笑顔を見せる。

「え、良いんですか?」
「焼き立ての時間に合ったお客様にお出ししてます」

ケースの上に置かれたメニュー立てに焼き立てフィナンシェの値段が書かれていた。

< 91 / 121 >

この作品をシェア

pagetop