a Piece of Cake.
こいはもうもく。
合コンしよっか! という湊ちゃんの提案に、へらと笑った。
「んー、ちょっと今はいいかも……」
「新しい恋は良いの?」
「なんかね、木谷さんって大人だなと思ったんだよね」
居酒屋の賑わいの中、ドイツビールのグラスを伝う水滴を見る。
「別れるとき、少しもわたしの所為だって言わないでさ、自分が悪いからって。仕事忙しいのも本当なんだろうけど、そこにわたしが色々連絡したから重かったっていうのもあったと思うの」
「そんなん言われたわけじゃないんでしょ? イリちゃんの想像だよ」
「それは、そうなんですけど」
「或いは被害妄想」
湊ちゃんは時々、痛いところをぐさりと刺してくる時がある。
しかも無自覚に、深く。