1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
4、侯爵さまは勘違いしています【メアリー視点】
怪我をした男を助けたら、貴族の令息だった。
メアリーはただ、善意で行っただけだった。
しかし、その男はメアリーに愛の告白をしてきたのだった。
メアリーは病気の母と幼い弟と妹のために野菜売りをしながら暮らしていた。
非常に貧しく、食べ物にも困っているほどであり、到底母親の治療費を出すことはできなかった。
そんなときに出会った侯爵家のフィリクスに支援してもらい、母親は病院で治療を受けることができて、弟や妹は毎日食事をすることもできている。
ありがたいと思った。
フィリクスはいずれ結婚したいと言ってくれているが、メアリーは困惑している。
貴族の令息と平民の女とではあまりにも釣り合わないし、だいたいメアリーにはフィリクスに対して愛という気持ちはまったくない。
いろいろと生活の支援をしてくれるいい人という程度だ。
だから、交際の申し出はいつも断っていた。
「メアリー、お母さまの具合はどうだい? さあ、これは君へのプレゼントだ」
フィリクスは家に来るなり薔薇の花束を差し出した。
「あ、ありがとう。あなたのおかげでずいぶんよくなったわ。でも、毎回こんな花束をいただくのは申しわけないわ」
「いいんだ。僕の君への気持ちなんだから」
フィリクスが来るたびに弟や妹たちは大騒ぎだ。
何せ美味しいお菓子をたくさんくれるから。
弟たちの笑顔を見ると、メアリーは断ろうにも断れなかった。