1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

 実はメアリーは困ったことになっていた。
 友人であるケリーが、町で噂を耳にしたらしい。
 侯爵家のフィリクスが婚約者をないがしろにして平民の女にうつつを抜かしていると。


「それって私のことだよね?」

 ケリーが家を訪れた日、メアリーが改めて確認をした。
 ケリーは頷く。


「ああ、そうだ。お前があの貴族と恋人関係にあるという噂になっている。このままではお前の弟と妹にも影響が出てしまうぞ」
「どういうこと?」
「お前らに対する町の人の反応はさまざまだ。障害を乗り越えて結ばれる運命の恋人と言う者もいれば、金目当てで略奪しようとしていると言う者もいる」
「略奪ですって? そんな……酷いわ。そんなこと考えたこともないわよ」
「わかってるよ。でも、今の状態じゃ言いわけにもならないだろ」
「そうね。一体どうしたら……」
「一芝居打ってみたらどうだ?」

 ケリーの提案に、メアリーは賭けに出ることにした。



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