1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
ある日、いつものようにフィリクスは花束とお菓子を持ってメアリーの家を訪れた。
しかし、彼を出迎えたのはメアリーではなく、ケリーだった。
フィリクスは初めてケリーと対面する。
メアリーはひやひやしたが、フィリクスは意外にも冷静に訊ねた。
「メアリー、この人は誰だい?」
「えっと、幼馴染の……」
説明の途中でケリーがメアリーの肩を抱き寄せて言った。
「俺の女だよ。あんたこそ、メアリーに何の用だ?」
「ちょっとケリー!」
焦ったメアリーがケリーに抗議をしてフィリクスに目を向ける。
すると、フィリクスは呆気にとられた表情で訊ねた。
「メアリー、君は恋人がいたのか?」
違う、と言おうとしたが、これはチャンスだ。
いい加減にフィリクスとの関係を断ち切らなければならない。
メアリーは「そうよ」と答える。
「彼は私が幼い頃からずっと私を愛してくれているの。私は将来、彼と結婚するのよ。だから、あなたと恋人関係だなんて噂が町に広がったら迷惑なの」
冷たい言い方だとは思うが、これくらい言わないとフィリクスは諦めないだろう。