1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
メアリーは真剣な顔で話す。
「フィリクス、あなたには本当に感謝しているわ。あなたのおかげで母の病も快方に向かっているし、弟や妹にも美味しいものを食べさせてあげられた。ありがとう。でも、これ以上お世話になるわけにはいかないわ。私には婚約者がいるし、あなたももう結婚をしたのよ。妙な噂がこれ以上広がる前に、私たちはもう会わないようにしなければならないわ」
フィリクスはショックを受けたような顔で俯いた。
そして、彼はちらりとケリーを見た。
ケリーは睨むようにフィリクスを見ている。
「そうか、君には僕の他に恋人がいるのか。てっきり、君は僕のことが好きだと思っていたから」
困惑の表情でそんなことを言うフィリクスに、困惑したのはメアリーだ。
「どうしてそう思ったの? 私は今まで何度もあなたに伝えてきたわ。私はあなたのことを人として好きではあるけど、それは恋人相手の好きとは違うって」
「照れているのかと思って……」
フィリクスの言い分に、メアリーもケリーも呆れかえる。
ケリーはメアリーに聞こえるようにぼそりと「大丈夫か? こいつ」と言った。