1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
「そうだろうか。僕にはその感情の違いがよくわからないんだ」
「そうね、ヒントを教えてあげるわ。本気になった相手に別の男がいたとしたら、あなたの胸の中は嫉妬の嵐に違いないわ。この人のようにね」
メアリーがケリーを横目で見ると、彼は真っ赤な顔をして舌打ちした。
「嫉妬か……それは一体どんな感情だろう?」
それ以上、説明をしてやる義理はなかった。
フィリクスが帰っていくうしろ姿は、とても寂しそうに思えたが、メアリーは黙って見送った。
「ところで、お前俺のこと愛しているってほんと?」
「はっ!? バ、バカ……違うわよ!」
「顔が真っ赤だぞ」
「うるさいわね。もう、用事がないなら帰ってよ」
「お前に用事があるんだよ。俺たち、本当に付き合わないか?」
メアリーはまんざらでもなかった。
フィリクスに対しては恩人として感謝の情はあったが、ケリーに対してはもっと親しくて一緒にいたいという気持ちがある。
ケリーの申し出に、メアリ―は照れくさそうに「いいわよ」と答えた。
メアリーは祈った。
どうか、フィリクスが真実の愛に気づける日がきますようにと。