1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
どちらにせよ、淡い恋は終わってしまったのだ。
明日からはメアリーのことは忘れて、自分の責務を果たすだけだ。
「アリア、今日から一緒に寝ないか?」
フィリクスは妻の寝室を訪れた。
当然、アリアは驚いていた。
「私たちは偽りの夫婦ですよ」
当たり前だが、そのように言われた。
何も反論はできない。
自分からそのような関係を望んだのだから。
黙っているとアリアが続けて言った。
「お相手の女性との行為に不満でもあって私で試してみようなどとお考えでしょうか?」
フィリクスは驚愕し、同時に赤面して、慌てて反論した。
「そ、そんなことはない! 僕はまだ一度もそのような行為をしたことはないんだ!」
自ら未経験であることを暴露してしまった。
死にたくなるほど恥ずかしいとはこういうことを言うのか。
しばらくお互いに言い合いをしていたが、やがてアリアがきっぱりと言い放った。
「旦那さま、私は愛のない行為はいたしません!」
当然だ。
フィリクスは新婚早々アリアを拒絶してしまったのだから。
今さら夫婦生活をしようなどと言っても無理に決まっている。
思いがけず、かなりショックを受けていることを自覚した。
自業自得である。
何も反論できない。