1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

 フィリクスにできることは、離縁するまでのあと1年、ひたすら妻のために尽くすことだった。
 彼女のためにいろんなことをしたかった。
 ほしいものや好きなものを何でも与えてあげたいと思った。

 これは罪滅ぼしなのか、それとも別の理由なのか。


 今夜は初めて夫婦で参加するパーティだ。
 アリアに似合いそうなドレスを自ら店に足を運んで選んだ。
 本当は一緒に行って彼女が試着する姿を見て購入したかったが、それを彼女は拒否するだろうと思った。


 アリアがパーティの身支度をしているあいだ、フィリクスはそわそわして落ち着かなかった。
 早く、妻のドレス姿が見たい。
 その欲求に耐えられず、つい部屋を訪れてしまった。


「アリア、部屋に入ってもいいかい?」

 アリアからは冷たい返答があった。


「パーティの時間までまだ少しありますでしょう? どうせ、あとで披露しますから、今でなくてもよろしいのではないかと」
「すぐに君の姿が見たいんだ」

 思わず思ったことをそのまま言ってしまった。
 当然、アリアからは困惑したような声が返ってきた。

 なんと愚かなことをしているのだろう。
 自分でも情けなくなる。

 諦めて自室へ戻ろうとしたところ、部屋の扉が開いた。
 そこにはドレス姿のアリアが立っていた。
 それを目にした瞬間、笑みがこぼれた。


「アリア、なんて綺麗だ。やはりそのドレスが君に似合うと思ったんだ」


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