1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
ジタール卿とアリアが仲良く談笑している姿を目にして、胸の奥がもやもやした。
落ち着け。ふたりは会話をしているだけだ。
社交辞令に過ぎない。
そう思っていたが、事態は急展開を見せた。
ジタール卿がアリアの手の甲にキスをしたのだ。
「あいつ……!」
思わず頭に血がのぼり、彼らに近づいていった。
ジタール卿はアリアの手を握り、彼女に顔を近づけている。
徐々に小走りになり、急いでアリアに手を伸ばした。
そして、彼女の肩をつかんで抱き寄せた。
「アリア」
フィリクスはアリアの肩を抱いて、ジタール卿を睨み据える。
「ジタール卿、彼女は僕の妻です。あまり馴れ馴れしくされると困るのですが」
自分でも驚くほど低い声で、相手を威嚇するように言い放った。