1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

6、旦那さまが突然好きだと言い出した


「ジタール卿、彼女は僕の妻です。あまり馴れ馴れしくされると困るのですが」

 めずらしく、フィリクスの低い声を聞いた。
 まるで静かな怒りが込められているような声音だ。


「ほんの挨拶ですよ。久しぶりに会った友人に対する行為です」
 とジタール卿が言った。

 すると、フィリクスは彼を睨みながら反論する。


「あなたの行動は行き過ぎている。異性の友人の、しかも人妻の手を握るのは失礼ではないかと」
「あなたに言われたくないですね。妻がありながら別の女の手を握っているのでしょう? ああ、それ以上の関係でしたか」
「ジタール卿!」

 一体これはどうなっているのだろう。
 アリアは思わずフィリクスの腕をつかんで、ジタール卿に会釈した。


「すみません、夫と話があるので私たちはこれにて。では、ジタール卿。お元気で」

 アリアはフィリクスの腕を引きながら、そそくさと立ち去る。
 周囲に声をかけられて、引きつった笑顔で会釈をする。
 今はとりあえず会場を出たかった。


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