1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
「ああ、そうか。これが嫉妬なのか。知らなかった」
「えっ!? 本当に?」
「驚いたよ、アリア。僕はどうやら、君に近づいてくる男に嫉妬しているらしい」
「驚いたのはこっちですわ! あなた、恋人がいるんじゃないの?」
「そ、それは……」
フィリクスは一度口ごもり、恥ずかしそうにアリアをちら見して、急に目をそらした。
「どうやら僕の勘違いだったらしい」
勘違い!?
どうやったら勘違いになるのよ!
「アリア」
フィリクスは急にアリアの両手をぎゅっと握った。
そして、真剣な眼差しで見つめてくる。
「僕は気づいてしまった。どうやら真実の愛は君だったのだと」
はああああああっ!?
「いや、そんなこと言われましても……私はあなたのこと好きでもないし」
きっぱりとそう言うと、フィリクスは落胆した。
「そうだね。そもそも最初に拒絶したのは僕のほうだ。今さらそんなことを言われても困るだけだね」
「ええ、そうですね」
アリアが即答すると、フィリクスは深いため息をついた。
え、何なの? まさか、ここで少し躊躇するような反応でも期待したの?
アリアの胸中は混乱している。
「僕は本当に愚かだった。君という妻がありながら、勝手な勘違いで大切なものを見失っていた。深く反省すべきだ」
「そうですね。私と離縁して再婚するときにはぜひ目の前の妻を大事にしてください」
もう何を言っても無駄だと悟ったのか、フィリクスは話題を変えた。
「ちょうど仕事が一区切りつくから、旅行しようと思うのだが、君も同行しないか?」
え、それって……。