1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
最初から、この結婚に期待など微塵もなかった。
伯爵家に生まれた以上、政略結婚は避けられないことだったが、それでもアリアがフィリクスとの結婚が嫌だったのは、すでに彼がよそに好きな女がいることを知っていたからだ。
フィリクスの想い人は平民である。
噂ではフィリクスが北部の視察に訪れた際、雪山で足を滑らせて転倒。そこで怪我の手当てをしてくれた女が今の想い人であるらしい。
女は貧しく、家族のために身を粉にして働いていた。それを知ったフィリクスが、彼女と家族に支援をしたいと申し出て、その頃から彼らは交流が始まったらしい。
そして、何度か会っているうちに、フィリクスは彼女に恋心を抱くようになる。
上級貴族と平民という身分違いの恋の話は社交界を駆けめぐり、当然アリアの耳にも入ることになった。
平民の女を娶ろうとするフィリクスに反対した侯爵家と親戚たちは、急いで彼の婚姻を決めた。
その相手がディゼル伯爵家のアリアだったのだ。