1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
「旦那さまがお休みを取られるようですので」
とアリアは冷静に返す。
すると、義両親は涙ながらに喜んだ。
「素晴らしい。私たちは嬉しいよ。ようやく本当の夫婦らしくなったね」
と義父。
変わらず偽りの夫婦ですけど?
「フィリクスも目を覚ましてくれてよかったわ。アリアさん、あなたのおかげよ」
と義母。
いいえ、私は何もしておりませんけど?
「とにかく今夜は祝いだ。いいワインを用意させよう」
「まあ、ふたりきりの時間をお邪魔してはいけないわ。私たちは影でひっそり見守りましょう」
「ああ、そうか。気が利かなくて悪かった」
「本当ですわよ。もう子供じゃないのですから」
いやー、むしろご両親一緒の旅行でもぜんっぜん構わないんですけどねー。
旦那さまとふたりきりとか、無理すぎる。
などと口には出せないのでアリアは静かに微笑んで紅茶を飲み干した。
そして、フィリクスと夫婦ふたりきりの旅行の日。
当然ながら侍従と侍女と使用人数人という大人数での旅となった。
侯爵家の別荘に到着し、フィリクスとランチをともにすればあとは自由だ。
フィリクスは勝手に乗馬でもしに行くだろうから、アリアはゆっくりカフェテラスで森の景色を楽しみながら読書をして過ごすはずだった。
「アリア、僕と一緒に乗馬をしないかい?」
アリアは書物を抱えたまま、すぐに返答。
「見ておわかりありませんか? 私はこれから読書をするのです」
「こんなに晴れて気持ちのいい日に外へ出ないなんてもったいないよ」
「大丈夫です。テラスで紅茶を飲みながら読書をするのも気持ちいいので」
アリアはスラスラと拒否をするので、フィリクスはあからさまに残念な顔をした。
それはまるで、捨てられた子犬のようだ。
うっ……その表情は反則ですわ。