1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
7、旦那さまのことがかっこよく見えてしまう
鮮やかな緑が美しい森の中で立派な白馬がキラキラしている。
そのとなりで、フィリクスが満面の笑みをアリアに向ける。
「君は乗馬は初めてだよね」
「ええ、まあ」
兄は当然、乗馬をさせてもらっていたが、アリアにはそのような機会はなかった。
「では、僕が乗せてあげよう」
「いいえ、大丈夫です。だって……」
こわい。
単純に、馬の上に乗るのが怖いのだ。
落馬でもしたら骨折では済まないだろう。
想像しただけでぞっとする。
だが、次のフィリクスの言葉でアリアは決意する。
「もしかして、怖い? それなら無理しなくていいけど」
「まさか、怖いもんですか! 私、基本的に何でもできますから!」
意地を張ってそんなことを言ってしまったのが運の尽き。
フィリクスはアリアをお姫さま抱っこして馬に乗せた。
「ちょっ、ちょっと旦那さま!」
「大丈夫、僕が支えてあげるから」
「はあ? どうやって……」
フィリクスは自身も馬に乗ると、アリアを背後から抱きしめるような格好になった。