1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
「大丈夫さ。白銀はいい子だから、僕のいうことをきちんと聞いてくれる。ああ、この馬の名前だよ」
ネーミングセンスにわざわざ突っ込みを入れる余裕など、アリアにはなかった。
少し馬が動いただけでアリアは恐怖のあまり大騒ぎするのだ。
アリアはぎゅっと目を閉じる。
「きゃああっ! ちょっ、待っ……動かないで! 揺れる! 落ちる! 死ぬ!」
「大丈夫。アリア、目を閉じているほうが怖いよ」
「むりむりむり! 降ろして!」
ガタンッと大きく揺れて、アリアは思わずフィリクスの腕にしがみついた。
「きゃーきゃーきゃー! 落ちるうう!」
「大丈夫だよ。ほら、見て」
「えっ?」
太陽が西の山へ沈みかけた頃。
森をくぐり抜けて到着したその場所は小高い丘の上だった。
荘厳な山々の景色とともに広がるのは、黄金色の空である。