1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

「わあっ、綺麗! なんて素敵なんでしょう」
「そうだろう。僕はここから見るこの景色が特に好きなんだ」
「でしょうね! 私も大好きですわ!」

 アリアは思わずはしゃいでしまい、振り返ってフィリクスの顔を見る。
 彼は嬉しそうに笑顔を向ける。
 アリアは慌てて顔を背けた。


「はしゃいでしまって、お恥ずかしいですわ」
「僕は嬉しいよ。アリアが心を開いてくれているのだと思って」
「それはどうでしょう? きっと勘違いですよ」
「そうか」

 フィリクスはそれ以上何も言わず、ただ優しく微笑んでいた。


 アリアは強がって言ったものの、実は結構楽しんでいた。
 それでも、どうしても素直になれないでいる。
 ここで認めてしまうと今までの決意とか信念とかそういったものが崩れていく気がして。

 結婚当初に決めたことを思い出す。

 1年間だけの偽りの夫婦だ。
 アリアは再度自分に言い聞かせる。
 
 そうよ。
 旦那さまのことなんて好きじゃないんだから!


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