1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
アリアは初めて町で見知らぬ男性に声をかけられた。
きちんとした身なりをしているところを見ると、貴族のようである。
だが、パーティでは見かけなかったので下級貴族かもしれない。
そういう貴族が声をかける相手というのは、平民である場合は遊び目的、令嬢であれば金目的と聞いたことがある。
「あなたが声をかけてきたのは遊びが目的? それともお金?」
「いや、君に一目惚れしたんだよ」
男の返答にアリアはもやっとした。
男ってこんな簡単に一目惚れする生き物なのかしら?
おそらくきっとフィリクスもこんなふうに一目惚れしたのでしょうね。
考えてみたらイライラする。
「せっかくですが、待っている相手がおりますので」
「え? でも君、結構待たされているよね? それに、少しよそよそしい雰囲気だったし、恋人と上手くいっていないんじゃない?」
「あなた……まさか、ずっと見て……?」
どうやらこの男、フィリクスがアリアと離れる前からずっと監視していたようだ。
アリアはぞっとした。
「と、とにかく、私はあなたに興味ありませんので」
そう言うと、男はアリアの腕をつかんだ。