1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

 フィリクス自身も外面をかなり気にする男だったので、親族たちを黙らせるためにこの結婚に渋々承諾したのだろう、というのがアリアの見解だ。


 アリアに妻の役目を負わせて、そのあいだ彼は恋人と濃密な時間を過ごすことだろう。そして、1年後にアリアと離婚したあと、ほとぼりが冷めた頃に恋人と再婚するのだろう。

 一度政略結婚で失敗した場合、次の結婚で親族が口出しすることはほぼない。
 というよりは、二度目三度目の結婚について周囲はほとんど興味を示さない。

 家族は一度目の結婚しか口を出さない。
 それを利用して本命である平民と再婚をする貴族も割といるらしい。

 フィリクスもそうするつもりだろう。


「そっちが利用する気なら、こっちも利用してやるわ」


 アリアは広いベッドに寝転んで思いっきり伸びをした。


 アリアの生家であるディゼル伯爵家は裕福だが、家族の仲はあまりいいとは言えなかった。
 父である伯爵は家庭を顧みず、よそに愛人が何人もいた。
 母は跡継ぎである兄を溺愛し、病気がちな妹に過保護だった。
 健康なアリアは母の眼中にはなかった。


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