1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
8、妹からの宣戦布告!?
あの新婚旅行からすでに半年が経過しようとしていた。
つまり、約束の1年まであと少し。
フィリクスとアリアの関係は進展せず、このままずるずると期限を迎えようとしていた。
あれから、ふたりの関係は悪くなることはなかったが、よくもならなかった。
フィリクスは最初のほうこそアリアに猛アプローチしていたが、アリアがそれを冷たく返しているうちに、だんだんと彼の行動は落ち着いてきた。
だが、アリアとて全面的に拒否をするつもりはなかったのだ。
ただ、自分の気持ちに気づいてはいけないというふうに蓋をしてきたのである。
だからお茶の時間でも、ふたりが同時にお菓子に手を伸ばし、手が触れた瞬間お互いに引っ込める。
そして、ほんのり顔を赤くしてしばらく黙り込むのだ。
「子供の恋愛ですかね?」
と侍女のユリアは呆れぎみにぼやくのだった。
ふたりが両想いであることは、侍女や使用人など周囲はほぼ気づいていた。
本人たちだけが壁を作ってお互いに踏み込まないようにしているのだ。
そんな日々が続いたある日のことだった。
アリアの妹のミラベルが、突然侯爵家に挨拶に来ることになったのである。